純喫茶みかづき

ほっとしたい昼。眠れない夜。常時、開店中です。

ドラマティック・レイン

もはや日本が日本という国をやめようとしているとしか思えないような雨が、ここのところ実によく降った。バケツをひっくり返したような、なんてよく言ったものだったがバケツどころじゃない、世界中の川の水を集めて一気に落としました、みたいな雨である。…

バーニンバーニン、俺の昼だよ

「もえ」ふと、ふすまが開く。「今日は俺が昼ごはん作るから」 土曜のお昼前。中学一年生になったばかりの私は、初めての定期試験へ向けてむつむつと勉強しているところだった。 「え!?」私はびっくりして振り返った。「いいの?」 焼きそばでいい?兄は、…

ペパーミント伝説

ムズムズする。 何がって、花粉の話である。 私はおよそ10年前、大学卒業を間近に控えた3月、突如として花粉症を発症してしまった。 「いやー、デビューしちゃったってやつですね」目玉が狂おしいほどかゆくなり、ついには角膜が卵の白身のようにアコーディ…

とどまるものたち

ちょうど一週間前、海へ行ってきた。幼少期を過ごした町の、観光地でもなんでもない海辺だ。 今年の花粉は昨年より多いというし、まださほど飛ばないうちに、一度は。連休も望めない中での、貴重な一日。古代ローマ帝国の襲来以上の、一年で最大の繁忙期。お…

バーニンバーニン、きみの昼だよ

これは私の強みでもあり、時として悲劇を呼ぶウィークポイントでもあるのだが、私はなかなかの貧乏性である。 過去にギンガム姐さんの過重労働やヴィッツの凄絶な最期について語ったが、それより遥か過去、私が学生だった頃にも悲劇は起きていた。 あれは上…

テーマフロム、トーホク。

悲報は突然、降ってわいた。 「おはようございます! 国道、バイパスとも大混雑のため、 杉山、まだ店にたどり着けていません。 出勤の際、お気をつけください(><)」 それは私の出発時刻5分前のことであった。そして、うちの店の開店時刻5分前のことでもあ…

ア・ハード・デイズ・ナイト

成人の日、なんて、まだね、昨日のことのように覚えてる。 小学校の同級生と久々に顔を合わせて、変わんないねー、とか、変わったなーとか。担任の先生と一緒にタイムカプセル開けて、とか。つつがなく、お決まりのあれこれが片づいていく中。 その日の夜、…

なんでもない、なんでもない

君の笑顔をあいつじゃない こいつじゃない僕が見つける世界中で 僕だけが知ってるほら 素敵な君さ ――RAZZ MA TAZZ『素敵な君』 『あずきちゃん』の勇之助くんと『姫ちゃんのリボン』の大地くんは女子が一度は必ず通る道、なんて友人が言っていたけれど私なん…

なんてったってアイドル

師走だ。今年もこの月がやってきた。 もうね、昨年とまったく同じ注釈になりますけど、師走はうちの店の、一年で2番目の繁忙期にあたりまして。師走イコール、クリスマス、クリスマスイコール、戦。みたいな。レジ前の、あの永遠に途切れなさそうな列とか、…

なんじゃごりゃあ物語

兄はよく、くだらないメールを送ってきた。それはたとえば、こんなふうであった。 ショウヘイヘ~イショウヘイヘ~~イ!!! ショウヘイヘ~~~~イ!!!! プッ デデーン。浜田、アウトー! 私は彼の妹として、それをやり過ごすでもなく疎むでもなくいつ…

はんぶんの月

子どもの頃、『さんまのスーパーからくりTV』という番組が大好きだった。兄と二人で、毎週日曜日の夜7時を、楽しみに待っていた。 人気コーナーの一つに、お悩みパビリオン、というタイトルでご長寿や大学教授などが、訪れた人々の悩み相談に応えるといった…

ハンサムな彼女

関東首都圏が大きめの地震に見舞われて、およそ3週間。 地震大国、ニッポン。近頃の地震速報に、以前ならほとんど登場しなかった地域も名を連ねるようになった。もはやこの国のどこにいても大地震に見舞われる可能性があると言ってもいい。 私の住まう地域…

スモウメイト

かまわず大相撲の話を続けます。 照ノ富士といえば、五月のケーズデンキを思い出す。 休みの日の夕方、確かUSBか何かを買いに家電量販店を訪ねた。その際きまって電子ピアノコーナーに立ち寄るのだが、私にとってゆずれないポイントが一つある。鍵盤の重さで…

私、待ってるから。

大相撲九月場所が始まった。 まあ大相撲が始まったっつって騒いでんのはウチの店で私くらいのもので、大相撲の話なんて誰も聞いちゃくれなくて、誰とも喜びも悲しみも分け合えなくてロンリネス、なわけなんですが。 夏も終わりという頃にね、秋物靴下のカタ…

その道のプロフェッショナル

接客業というだけあって 雑貨店での仕事は接客が基本にあるけれど、 あれはいつの夏だったか。 店長が、カウンターで靴下の発注書を作る私のもとへ来て、言った。 「日向さん」「接客、代わっていただけませんか」 顔を上げて見ると、 店長は心細そうな微笑…

ラリアットからのジャーマンスープレックス

前回父にまつわるエトセトラを書きつづって以降、 レジへ駆けつけようとして 店のマネキンを顔面から張り倒したり 両替機に大量の硬貨を投入して レジ金を詰まらせたりしている間に うっかり七月どころか八月になってしまったので、 いいかげん父の日の話を…

ミューゲの日

男性から花を贈られるという場面が、これまでの人生で二度だけある。一度目は、保育士時代、児童クラブへ通う少年から。 二度目は、つい先日のことである。 一昨年より、 以前時代遅れのアドレス変更の回にも登場したゼミの恩師のご著書出版企画に 執筆者と…

レ・ミゼラブル

今年の、いや毎年の父の日について 図らずも気がついてしまったことがある。 お父さんの扱いが、ひどい。 ひどいもひどい、ひどすぎるのである。そう言い切ってしまう背景には 決定的な比較対象が存在する。 母の日である。 毎年レジに立っていればわかる。 …

危険なクッキングパパ

うちの店には酒豪がいる。 ミチエ姐さんである。 ミチエ姐さんはもはや母親といっても差し支えないほどの大先輩で、小柄で細身、 それでいて力持ちでお人好しで、混雑するレジカウンターへ呼ぼうものなら くノ一のような走りで馳せ参じる 我が雑貨店の愛すべ…

秒速6メートル

私が勤務先でスプリンターとして認識されていることは 以前にも書いたとおりだが、先日もまた、走る必要に迫られた。メンバーズカードの返し忘れだ。 メンバーズカードには連絡先の欄がない。持ち主のお客様に電話でお伝えすることも叶わず、 この場合スタッ…

愛のひと、チャップリン。

人生はクローズアップで見れば悲劇だが、ロングショットで見れば喜劇だ。 ――チャールズ=チャップリン 今日は、この言葉を遺したそのひと、 かの偉大なる喜劇王チャールズ・チャップリンの誕生日である。 チャップリンについてはきちんと書きたいところなの…

コンパクトびっくり箱

アドレス変更に至った経緯は前回お話ししたとおりだが、変更過程にいくつかの事件が発生した。 だいたい電話帳のグループごとに アドレス変更メールを送ったのだが、 電話帳のメンバーを改めてじっくり整理する中で とんでもない事実に気がついてしまった。 …

深夜1時の恋人

メールアドレスを変えた。 それも携帯の、いわゆるキャリアメールのアドレスである。 その昔は、恋人が替わるたびにお披露目されるヨシキイズフォーエバー的なアドレスや 突如悟りを開いたポエムちっくなアドレスなどが なんの節目もなしにしょっちゅう送ら…

3.14のビションフリーゼ

ここのところ、春の新商品が続々と入荷している。 クッションカバーやマット類、 桜柄の食器に、UVカットストール。 2月の大雪にまぎれて、 いかにも盛夏用のノースリーブのワンピースが入荷してきたときは スタッフ一同さすがに驚いた。 先日、 その驚きを…

桃の花はほころび始めたばかりで

今日、本当は全く違う話を書くつもりだったんですが、 帰宅してあまりに衝撃的な出来事があったので、別な話を書きます。 (キャスター、緊迫した表情を浮かべて) たった今、新しいニュースが入りました。 速報が入りましたので 番組の予定を変更してお送り…

めぐるめく世界

それはまるで、私だけ時の中におきざりにされたような。 以前よりうすうす感じていたことだが 私は時間を少なく見積もる傾向がある。 作り置きおかずの調理に、 30分で出来上がると思って1時間かかってしまったり 2時間もあれば書けると思ったブログ記事の…

みんなのひろば

昨日は、2月とは思えないほどに、暖かい一日だった。 冬は職員通用口から出るとき 「おまえらはな、暖かかったんだろうけどな、 ほんとは外は、ずうっとこうだったんだぞ。えいっ」 とばかりに襲い掛かる冷気を覚悟し 身を縮こまらせて扉を開くのだが、 そ…

ホワイトベリー・ラブ~後編~

前回の続きである。 ずっしりと重みを増した手提げ袋を持ち帰り、 えいやっと白あんを取り出す。 どうすんのよ、この量。 どうするもこうするも、 いちご大福を作り始めるほかなかった。 さて、肝心のいちごであるが これは母が手配してくれることになってい…

ホワイトベリー・ラブ~前編~

今年のバレンタインについて記そうと思う。 幼い頃から毎年 父と兄にバレンタインデーのお菓子を手作りしてきたが、 兄が結婚して家を出て以来、 ここ近年はあんこ好きの父向けに、和菓子を作るようになっている。 みたらしだんご、白玉ぜんざい、 昨年なん…

メロンまん伝説

先日忘れられないワンピースやらコートやらにからめたお話をしたが、 私には忘れられない中華まんがある。メロンまんである。 メロンまん、という時点で 『中華まん』と称してよいのかわからないが、 それはやはり、中華まんと同じノリで売られていたのであ…