純喫茶みかづき

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ぼくらのカントリーロード

自分だけだと思っていたのに。
そういうこと、ありますよね。

 

夏にふと思い立って、録画していたチャップリンの映画を見続けた。

 

ライムライト。
独裁者。
モダン・タイムス。
チャップリンの黄金狂。
チャップリンの殺人狂。
そして、街の灯。

幼い頃に観た記憶には、コミカルな動きばかりが残った。
全編笑い通しのコメディだと思っていた。
けれど違った。
愛情いっぱいのまなざしで描かれた、笑いと涙の物語だったのだ。

 

 

以来、チャップリンについてもっと知りたくなり、図書館へ足を運んだ。
チャップリン、で資料検索をかけたところ、

 

チャーリー・チャップリン アーリーコレクション 全10巻」

 

!!!!!

そうか!!!!

 

図書館って、DVDも、あるんだった!!!!

 

 

大喜びして借りに走った。
初期作品をどうにかして観たいと思っていた私には、願ったりかなったりだった。

ずらりと10巻そろったチャップリンのコーナー。
チャップリンの自伝に加え、まずは2巻、DVDを借りた。
すっかり夢中になり、次のお目当てを借りに図書館へおもむくと。

 

あれ?

 

チャップリンの消防夫」が、ない。

 

この前借りに来たときは、確かにあった。
消防夫は最初の2巻に選ぶか迷ったから、よく覚えている。

ということは、だ。
誰かほかに、チャップリン初期作品を観ている人がいる。

 

胸が熱くなった。
私だけだと、思っていた。

 

そして次の週、帰ってきた「消防夫」の代わりに、「チャップリンカルメン」が旅に出ていたのである。

 

この人も、同じことを考えてる。
チャップリン作品をコンプリートしようとしている。

 

かんとりーろーーーー

 

な気分だ。

 

 

スタジオジブリ不朽の名作、「耳をすませば」。
ご存じですか。
ヒロイン月島雫のお相手役、
そしてジブリきっての頭脳派ストーカー、
天沢聖司の犯行手口。

図書カードです。

図書カードというシステムは、個人情報的には、ガバガバなわけです。
誰が何を借りたか、一目瞭然だったのです。
天沢聖司はこのシステムを悪用し、雫に近づきました。
まったく、けしからん少年です。

ところが今は、誰が何を借りたかなんて知るすべもない。
天沢聖司だったらハッキングでもして洗い出すのかもしれませんが、基本的には知ることなど不可能。

誰なんだろーなんて思いをはせながら。

 

同じ空の下で、誰かが
同じようにチャップリンの初期作品を観てる。
観ては返し、また借りて。
もしかしたら今日もどこかで観てる。
なんだか交換日記みたいだ。


女子の交換日記にありがちなのが、
止めてるの誰?
えー、うちじゃないよ。
あたしもちがーう。
じゃあミキちゃんかー、みたいなね。
静かな犯人探しが行われちゃったりするアレ。

あんな、殺伐とした感じじゃなくて、
言うなれば、そう、文通みたいなもんです。

借りたいと思っていたものが、返ってきている。
お返事を待っていて、来てる!みたいな。
その誰かさんは返しに、確かにここを訪れていたわけです。

いやー、ロマンティックじゃないですか。

そこで月島雫みたいに想像の翼が広がっちゃうわけです。
天沢聖司・・・
いったいどんな人だろう、って。


私にとっての天沢聖司は、
映画通の、チャップリンに関しては古参のおじいちゃんかもしれないし、
私と同じように、最近チャップリンにはまった、ひょっとしたら女子高生とかかもしれない。
はたまた、YouTubeなどのにぎやかな娯楽の中にあって、サイレント映画の新鮮さに夢中になった小学生かもしれないし。
想像はふくらむばかりです。

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チャップリンを介してもう一つ、奇跡のドラマが起こった。

 

 

チャップリンの自伝を借りようと「映画」の資料棚へ向かい、
自伝をゲットしてくるりと振り向いた先に、
偶然見つけた「ガラスの仮面」。

 

!!!

図書館って、漫画も、あるんだ!!!

 

恥ずかしながら、知らなかった。
しかし「演劇」の資料棚にあるってすごすぎやしないか、ガラスの仮面

まずは1巻を借り、一瞬でとりこになった。
面白い。なんてドラマだろう。
早く続きを読みたくてたまらないのに、1巻の次は26巻。
もしかしたら図書館には全巻ないのかも・・・

 

あきらめかけていた次の週。
ごっそり抜けていた2,3巻が、戻ってきていたのである!!

 

誰かが、読んでいる!!

 

私だけだと、思っていたのに!!

 

私はすかさず2,3巻を手にとった。
もし、まずは2巻だけ…とでも遠慮しようものなら、3巻にしばらくめぐり会えないかもしれない。
しかし! 1巻をすぐに、返そう。
誰かが待っているかもしれぬ。
はたまた、たまたま興味をひかれた誰かが、肝心の1巻がないのならと、あきらめてしまうかもしれない…!

この作品の素晴らしさを、さらにたくさんの人に知ってほしい…!

そう、それがガラスの仮面に魅入られた者の、つとめ…!

 

あっちゃこっちゃで、利用者へ思いをはせながら、通うわけです、今日も図書館に。
もうね、もう、早くも4巻が読みたくてしかたがない。