ササミ・クエスト

可能なかたは、ポルノグラフィティの「メリッサ」をBGMにお読みください。

作り置き。
それは、ＨＰ低めの私を救う魔法。
毎日のように弁当を用意するのだが、
毎朝、一から新しいメニューを用意する明るい活力は、残念ながら私にはない。
もう作り置きを愛してやまない。
お弁当のおかず、作り置きしか入ってない。
数日分をまとめて作れるだけでなく、
日を追うごとに美味しくなるものまであるから
こりゃもう、良いことずくめだ。

そんな中、運命のおかずに出会った。
冷凍・作り置きハーブチキン。

レタスクラブのＬＩＮＥから、
冷凍作り置きで毎日をラクに！
みたいな、私のための記事が流れてきて。
いや料理本にもあるけどさ、
冷凍すれば１週間！とか。
実際解凍とか面倒なんじゃないの？
なんて、食わず嫌いで敬遠してた。

でも、これは私の中で空前の大ヒット情報。
ささみにハーブミックス、
塩、こしょう、酢、
すりおろしにんにく、オリーブオイル。
これらを保存用袋に入れてもみ込んで、
冷凍するだけ！！

いや簡単！！！
これなら解凍も速そうだし、いける！！！

私は大喜びで、その晩さっそく作った。
明日の朝、どんなふうになってるかな。
遠足前夜の子どもさながら、眠りについた。

翌朝。

さぁーてと、ささみの具合はどうかな？
意気揚々と冷凍庫からささみを取り出す。
すると。

絶望的に硬い。
俺は負けない！みたいな、強固な意志さえ感じる。
鋼の意志っつーか、
いわゆるひとつの鋼の錬金術師っつーか、
私、錬金術なんて使った覚えないけど、
もうわけがわからないくらい、硬い。

そぎ切りにしたささみを
３個ほどポキンと切り離すはずが、
彼らの結束力が思いのほか固いっつーか、
そぎ切りにした記憶は、もしかして幻だったんじゃない？ってくらい、
互いに決して離れようとしない。
俺たちは負けない！みたいな、
ある種の絆さえ感じる。
ラグビー日本代表のスクラムとは、果たしてこういうものかもしれない。
日本中に夢と勇気を与えたラガーマンを
冷凍ささみにたとえたと知れたら、
私はどこかしらの団体から怒られるかもしれない。

もうね、ささみにこんな手こずると思わなかったし、
若干寝坊気味だったし、
仕方がないので

シンクの角にガンガン打ちつけた。
これがね、もうものすごい音するの。
刀鍛冶工房かな？ってくらいの音がするの。

一夜明けて、ささみは、鈍器になっていた。
使いみちによっては死傷者が出るレベル。
もうここらへんで、ＢＧＭはメリッサからドラクエの戦闘ＢＧＭに切り替わる。

なんて凶暴な手ざわりだろう。
冷たすぎてまともに持つこともできない。
ふれる指先が痛いっていうね、
一見すると90年代のJ-POPの歌詞かっつー特徴。
むろんそんな生やさしいものなんかじゃなく、
ドラクエの毒沼に匹敵する攻撃力をお持ちの、このササミ。

どうする？

にげる。
いのちだいじに。

否！！

こうする！！

カチッ！！

ファイヤー！！！！！！！

そうさ、もう時は朝！
ささみのスクラムに戸惑っている時間はねぇ！！
ガンガンいこうぜ！！！！！

・・・

・・・・・・

メラなんてもんじゃなく
ベギラゴンくらいの勢いで焼き尽くした結果。

ちょっと予想よりだいぶ炎上した。
ガンガンいきすぎた。
火はガンガン焚いちゃいけなかった。

ささみ、だいじに。