純喫茶みかづき

ほっとしたい昼。眠れない夜。常時、開店中です。

ホワイトロード

秋もいよいよ深まった、今日この頃。


緑から黄色へ、赤へ。
木々が色とりどりに姿を変えて人々の目を楽しませる中、
私の頭という山にも同じ現象が巻き起こっている。

 

髪の早期退職が後を絶たない。

 

抜けているわけではない。
髪が、明らかに色を失いつつある。

 

白髪が、明らかに増え始めている。


まさに、早期退色。
パッと見たところ、なんの問題もないように見える。
でも表面の髪をすくい上げて根元を見ると、
えええ。
あっちにも、こっちにも。
こめかみ付近なんて群生している。
見つけるたびに、根元のギリギリでカットして、急をしのいでいる。
友人に話すとけっこうな率で「わかるー!」って言われるけど
みんなほんとに?って思う。
これほど白と黒がしのぎを削ってる頭なんて、私くらいじゃない?

 

覚悟はしていた。
うちの父が、20代でこめかみ部分が真っ白だったという若白髪キャリアで、
続いて兄が、同じく20代でまんべんなく白髪がまじる若白髪を受け継ぎ、
私は10年近く、彼の白髪を根元から一本ずつカットする地味な役目を一手に引き受けていた。
母は「サルの毛づくろいみたい」と笑ったが、私たちは真剣だった。

両親のイケていない点はだいたい余すところなく受け継いでいる
弱点のデパートみたいな私は、どうなっちゃうの?ってずっと思ってた。
受け継いでいないわけがないんじゃないの?って。

 

白でもない、黒でもない、俺たちはグレイ。
なんてことは、GLAY以外にありえないわけで。
髪という業界には
もっかのところ、白か黒かしかない。

 

白と黒を混在させて成り立つのなんて
GLAYのHISASHIか関口宏くらいのもので、
解釈によってはゴー☆ジャスがそこに加わる。裏づける資料は特にない。
そこに名を連ねる勇気は、残念ながら私にはない。

一度もカラーリングなどしたことがない私の黒髪。
でも、確かに年々、徐々にこげ茶色っぽくなってきてるような…
光に透かすと赤茶色っぽいような…
そのうちストライキみたいな勢いで
一斉退職(色)!みたいなことになったらどうしよう。
ローマだって一日にして成らないのに、
私、一夜にしてロックになっちゃうの?

 

いっそぜんぶ
グレイもしくはホワイトになってくれちゃったほうが、もはやロックでいい。
でも、「わあ、ソフィーの髪、星の光に染まっているね。…きれいだよ」
とか言ってくれるハウルは、私にはいないわけで。

でも、
はずかしながら私、
まだ我が子に出会えることをあきらめたくないんだけど、
たとえば子どもの授業参観日とかに
そんなロックなかーちゃんまぎれてたら、
この国においてはすごく目立ってしまうんじゃなかろうか。
〇〇のかーちゃん、売れないバンドマンらしいぜとか、
根も葉もないウワサが流れるかもしれない。
いいだろう。
我々親子は毅然としていればよいのだ。

 

赤、オレンジ、黄色…
私たちの目を楽しませる木々の紅葉。
葉が色づいたのではなく、緑色を失って本来の色が現れたというが、
人間も白ではなく、赤とか黄色とかだったら、
果たして人々は白髪染めをしただろうか。
色を「失った」と、
自分の何かが衰退してしまったようには思わず、
進化した自分のように感じて、
もっと前向きな気持ちで色づきを受け止められたのだろうか。
それとも、どんな色であっても、
どこか気恥ずかしく思ってしまうものなのだろうか。

 

でもなあ。
そしたら冠婚葬祭の風景、えらいことになりそうだなあ。
結婚式の親族写真なんかもう、
全然、新郎新婦に目がいかない。視線散りまくり。
葬式の風景なんか、ヴィジュアル系ロックバンドのライヴ会場さながらの迫力である。

 

うーん。いいのかなあ。
我々人間は、ホワイトで。
いいのかもなあ。

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確かに続く、白髪への道。
旅はまだ、始まったばかりなのだ。