純喫茶みかづき

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おしゃべりなシーズン、season2

ここのところ雪の話ばかりしている気がするが、
今の私の日常によく雪が降るのだから、しかたがない。
あきらめてどうかお付き合い願いたい。

 

以前おしゃべりなシーズンでもふれたように、
雪の情景というものは実に饒舌である。

 

そんなこともあってか、
日向家では冬の天気予報を視聴するにあたり、
ある雪マークには特別な呼び名がついている。

 

通常の雪マークは、
雪だるまが、ぽとり、ぽとりと降る雪粒を見つめるものである。

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これはおおよそ、
「まあ普通のノリで降るよ」みたいな意味合いであり、
このマークの登場には、誰も特にコメントしない。
誰も驚かないし、なんの感動も巻き起こらない。

 

しかし、
「雪の底力をどうぞご覧ください」
みたいなときは、局では別なマークが採用される。

それが、こちらである。

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我が家ではこのマークを
「バーッ」
と呼んでいる。
我が家とは言ったものの、この呼称を用いるのは兄と私の約二名である。

用例を挙げると
「今日バーッなってたよ」
「新潟だけバーッなってる」
といった具合である。

 

このマークの登場に、日向家の茶の間は大いに沸く。
吹きすさぶ雪の中、一心に耐える無表情の雪だるま。
豪雪に見舞われること自体は笑えたものではないのだが、
あの無表情がなんともシュールでおかしみを感じさせる。
子どもの頃から今に至るまで、私たちはバーッに心を捉えられ続けてきた。

 

バーッの描き出す天候イメージは、
まず雪がしきりに降ること。
それ以上に、風が強いことである。

 

私の住む地は
その日の天気予報図上では「バーッ」ではなかったものの、
ひょっとしてこれが「バーッ」なのではないかとおぼしき事態に遭遇した。

 

中番の帰り道。
建物から一歩出ると、外がT.M.Revolutionだった。
BGMは、疑うまでもなく、WHITE BREATHだった。

 

職員駐車場は吹きさらしになっているのだが、
油断するとちょっと身体が浮くレベルの強風が吹きつけていた。
積もった雪が空へ巻き上げられていくその様は、
実際の降雪量とあいまって、倍、吹雪いているように見えた。
車の姿がかすんで見える。


ようやっと車のもとへたどり着くと、
いつものようにスノーブラシを取り出し、
ボンネットやルーフの雪下ろしに取り掛かる。

よいしょっと、とルーフをひとかきした瞬間。

 

 

 

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かいた雪が渦を巻いて、まるごと宙へ吸い込まれていく。
まさに熱い欲望はトルネイド。
間違いなく西川貴教がそこにいる。

 

これは、バーッに匹敵する風なのではないか。

 

吸い込まれて行方知れずとなった雪を前に、ふと思う。
脳内にWHITE BREATHを鳴り響かせたままぼうっと突っ立っていると、
背面から吹きつけた風に身体が一瞬浮き上がる。

 

風の前にひとたまりもない自分に、
改めて自然の持つ強大な力を思い知った次第である。

 

 

 

余談だが、先日初見の雪マークが天気予報に登場した。
雪の結晶としずくマークを組み合わせた美しいマークであった。
しかしあまりにもキレイすぎて、
どうもいまいち情景をつかみきれなかった。
豪雪なのか、小雪なのかもわからない。

「このマーク、初めて見た」
「吹雪のマークだ」

父がパソコンから目を離さずに言う。

「ええ!吹雪って、バーッじゃないの?」
「あれは大雪」
将棋のLIVE配信を見ながら、端的に事実だけを伝える父。

 

「バーッのほうが、吹雪!って感じするけどなぁ」
私は不服とばかりにこう口にした。
「ねえ、だってバーッのほうが、T.M.Revolution感出てるよね」

 

「ぶっ」

 

母が思わず吹き出す。

自身の干支を何周もしてきた母でさえ
「誰?」とならずに通用する奇跡。
改めてT.M.Revolutionの持つ強大な力をもまた、思い知った次第である。

さらに余談だが、
上述した初見のマークは「みぞれ」を表すそうである。
あんなにクールに堂々と誤情報を吹き込んだ父って一体……。