純喫茶みかづき

ほっとしたい昼。眠れない夜。常時、開店中です。

わたしのサンクチュアリ

ノーベル文学賞受賞者も発表され、
風が完全なる秋の訪れを告げる今日。
読書の秋にちなんだ話をひとつ。

甥っ子に絵本を贈るために、図書館へ赴いた。

図書館?本屋ではなく?
エス。図書館です。

図書館は、訪れる人に優しい。
ふらっと入って、無料で本を読むことが公然と許される。
本屋が軒並みつぶれるこの地域において、図書館なら蔵書数も豊富だ。
無料で、本を読み放題。
こんな優しいサービス、使わない手はありませんよ。

うん、でね、絵本を買う前に、中身を確認したいからここへ来た。
せこいねえ。
だけどゆずれないんだよ。ゆずれない願い
レイアースが集結しちゃうくらいゆずれない。
情操に与える影響を考えたら、ストーリー展開の吟味はゆずれない。
借りないけど思いっきり読みに来た。
なんら間違った利用の仕方ではないわけです。

 

そして訪ねた赤ちゃん絵本コーナー。
ばぶうばぶうなんて、赤子たちがひしめいていいはずのこのスペースに、
アラサーの女一人。連れ子なし。
完全にソロ活動。
正座で、それは食い入るように読み込んだ。

よほど異様な空気を放っていたのだろう。
ゴール下のゴリくらいの威圧感はあったかもしれない。
だって、さっきから誰も来ない。
職員さえちょっと迂回してくレベル。
結界張っちゃったかなって思うくらい、人っ子ひとり入って来ない。

私だけの世界。サンクチュアリ

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サンクチュアリっていえばそれこそ、図書館で借りて読んだ。
吉本ばなな著、サンクチュアリ
あんな出会いがあったらなあって素直にうらやましくなる。
たった一人の人間との繋がりで、人ってめちゃくちゃに救われちゃうもんなんだよ。

 

たった一冊の本との出会いも、人を、大きく救うから。

 

もうね、来て大正解でした。
これは決定!って思ってた絵本。展開、オチ、すべて、決定打に欠けた。
あぶねあぶね、やっぱ石橋叩くのって大事よね。なんて
石橋叩きまくってどこにも行けなくなってしまった女がしたり顔。

手に取る。うーん。戻し。
手に取る。あーいい話。
でもこの長さは、もうちょい大きくなってからかな。
手に取る。んー。なんだかなあ。
阿藤快もこう言ってるし、やめるか。

乳児向けの絵本は、響きや色彩を楽しむことに主眼を置く。
ストーリー展開はおそらく二の次だ。
でも欲を言えば、少し大きくなって、
一人で読んだときに、
その子の心を後押しできるストーリーも練り込まれていると、なおうれしい。

 

手に取る。うーん。
手に取る。うーむ。
手に取る。

あ。

これだ。


すばやく結界を解き、図書館を後にする。
その足でまっすぐ書店へ向かった。

 

後日。

 

両親が甥っ子に会ってくるなり開口一番。

「はるちゃん、大喜びだったよ」

え。

「絵本ひらいて見せたら、声上げてページに飛びついてねぇ、夢中になって見てた」

 

泣いた。
全、私が泣いた。

ゴリ、渾身のダンクシュート。
決まった!僕らのスラムダンク・・・!

 

そうあの日私は、甥っ子に小さな幸せを贈るために、図書館へ赴いた。

 

絵本をプレゼントするとき、
その前に、図書館で吟味してみるのほんと、おすすめです。