純喫茶みかづき

ほっとしたい昼。眠れない夜。常時、開店中です。

スモウメイト

かまわず大相撲の話を続けます。

 


照ノ富士といえば、
五月のケーズデンキを思い出す。

 

休みの日の夕方、
確かUSBか何かを買いに
家電量販店を訪ねた。
その際きまって電子ピアノコーナーに立ち寄るのだが、
私にとってゆずれないポイントが一つある。
鍵盤の重さである。
木でできた鍵盤に限りなく近いタッチが再現されることが、
私にとっての最重要ポイントである。

 

アルコール消毒の上、
さっそく鍵盤の試し弾きを試みた。
その頃、私の住まう地域は
新型コロナウィルスの感染状況が落ち着きを取り戻していた。
音は鳴らさずに、あくまでタッチだけ。

 

三台ほど試して歩いていくと、
ふと、目の前のテレビコーナーで
照ノ富士関が大写しになっていた。
テレビでは大相撲中継の真っ最中だったのである。
それも相手は、私の大好きな遠藤だった。

 

私は息をつめた。
見たい。
直前に、車を降りるときも
名残惜しくラジオ中継を後にしたばかりだったのだ。
遠藤の取り組みまでには家へ帰る予定だったのに、
うっかり長居してしまったか。

 

私はバコバコと鍵盤を押しながら
さりげなくテレビへ視線を走らせた。

いえ、私は、ピアノの鍵盤を確かめてるんですよ、と。
べつに、ちゃっかり大相撲を観ようなんて、しちゃいませんよ、と。
意識すればするほど不自然に映る気がして
妙に緊張しながら鍵盤を確かめ続ける。

 


すると、左前方におやっさんの姿を認めた。

 

先程から近くのオーディオを熱心に見ていたようだが
ふらり、ふらりとこちらへ歩みを寄せてくる。
心なしか、おやっさんの体の向きは
もはやオーディオではなくテレビの方を向いているように思えた。

 

 

まさか、このおやっさんも……?

 

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私はできるだけ自然体を装って
チラチラとテレビへ視線を送った。

 

「待ったなし!」

 

行司の声が響き渡る。

 

「手をついて!」

 

 

「はっけよーい!」

 

自然とピアノの腕も止まる。

 

のこったのこった!

のこったのこった!!

のこったのこった!!!

のこったのこった!!!!

のこったのこった!!!!!
 キャアアアアア(沸き始める観客席)
 ・・・・・・!!(息をのむおやっさんと私)

のこったのこった!!!!!!

のこったのこった!!!!!!!

のこったのこった!!!!!!!!

のこったのこった!!!!!!!!!
 ワアアアアアア!!!!!(大いに沸く観客席)
 ・・・・・・!!!!!!(息してないおやっさんと私)

 

のごっ・・・!!!!!!!!!!
 アアアアアアアア!!!!!
(歓声とともに両力士もつれるように土俵の外へ)

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!!!!!!!

 

観てた!!!!!!!

 

おやっさん、絶対相撲、観てた!!!!!!

 

 

 

勝敗の行方はぜひこちら
日本相撲協会公式チャンネルの動画をご覧いただきたい。
まさに熱戦。手に汗握る一番。

 

とにかく私は確信した。

おやっさんは間違いなく、相撲メイトであると。

 

おやっさんがフイッと顔をそむけたとき、
思いっきり私も、大相撲の画面から目をそらすところだったけど、
ばれたかなあ。私も観てたの。
ばれたよなあ。たぶん。
へへ。

 

 

 

そんなわけで、今日も同じ空の下、
このおやっさんのみならず
相撲メイトたちが熱戦の行方を見守っているのだ。

 

果たして千秋楽、最後に笑うのは。