日向もえこは２着しかパジャマを持たない

寒い。

この間まで、
ゆでダコみたいな顔で職場に参上したり、
お弁当の春雨が腐ったりするほど暑かったっつーのに、この急降下。
秋って、こんなにせっかちなやつだったっけ？
もうちょっと、慎重派じゃなかった？

今朝なんて寒さに震えながら目を覚まし、
鏡を見るとくちびるが青紫になっていた。
ついに自宅でアメリカン・チェリーに変貌する技まで習得。
アメリカン・チェリーぶりはどうやら健在だ。

吹く風には、冬の香りすら感じる。

そのためか、近頃店でパジャマがバンバン売れる。
子ども用パジャマが、もうひっきりなしに売れていく。
「孫のプレゼントに」なんて、ギフトでも頻繁に選ばれていく。

私はというと、虫の息のギンガム姐さんとコンビでいまだ活動中。
「朝晩グッと冷え込みますもんね～」なんて言いながら、何食わぬ顔で秋冬パジャマを売り続ける今日この頃だ。

「フランス人は服を10着しか持たない」を読んで、衝撃を受けた。

発売当初も、話題になったはずの本。
雑誌のおすすめ本特集でも見かけた記憶がある。
発行年、2014年。
ああ、その頃だったかも。
私がまだ、幸せになれないと思っていなかった頃だ。

「フランス」「パリ」のワードから
どうせリア充が読む本だろ？
よく読む雑誌はCancamです、みたいな女性が読む本だろ？
とか思ってた。

第一の衝撃。
全然、そんなことなかった。

むしろ、自己肯定感が低い人にこそ手に取ってほしい。
自分を大切にするための知恵がぎゅっと詰まった、うつむく心に優しく寄り添ってくれる本だ。

著者のジェニファーさんは、
典型的なカリフォルニアガールとのことで、
確かにイケイケでキュートな女の子として登場する。
間違っても、趣味でHYDEや河村隆一の物真似に興じるタイプではないだろう。

でも、
このスイーツ(笑)がどーだとか
このコスメがどーだとか
そういうキラキラキラした話が繰り広げられるんじゃなくて
ジェニファーさんが留学先のパリで学んだ、日々を丁寧に生きるための知恵が語られている。

で、こっからが、第二の衝撃。
ナイトウェアのくだり。

小腹が空いたジェニファーさんが、
夜中に台所を訪ね、
そこをホームステイ先のマダムに見つかるんだけど。

そんときの格好が、ほぼ、私。
ニアイコール私。
どう考えても私っつー出で立ちで見つかって、
それが後日、完膚なきまでに酷評されるのだ。
どうしてそんなぼろきれ着てるの？（きょとん）なんて。

衝撃だった。
私の寝巻は、
部活で使い古したびろびろのTシャツに、
10年物のギンガム姐さんだ。

やっぱ、だめ？
世界基準でだめなのこれ？
ギンガム姐さんのハリウッド進出は、むり？

ジェニファーさんは恥ずかしくなって、
ナイトウェア屋さんでパジャマを２着購入する。
クリーム色のボタンダウンのパジャマと、
きれいなオレンジ色のレースのシュミーズ。
ところでシュミーズって私、この本で初めて知ったからね。
スリップと何がどう違うの？
よくわからんが、スリップみたいなものらしい。

それはさておき、
ジェニファーさんは、こう語っている。

その夜、わたしは新しいクリーム色のパジャマを着て寝た。
高いものではなかったけれど、わたしにとってはそれまで持っていたなかで最高のパジャマだった。…それまではずっと、古いスウェットとぶかぶかのスクールＴシャツを着て寝ていた。パジャマなんて、べつに何だっていい――古くなったものを適当に着ればいいと思っていたから。…
昼間や特別なときだけじゃなくて、わたしにはいつだってきれいな女性らしいものを身に着ける価値があるんだ――
自分のことをそんなふうに大事に思ったのは初めてだった。
　ジェニファー・Ｌ・スコット(2014)フランス人は10着しか服を持たない　p.138

f:id:hinatamoeko:20201003222126p:plain