純喫茶みかづき

ほっとしたい昼。眠れない夜。常時、開店中です。

涙のラプソディ

「もえこせんせ。そうたと、けっこんしますか?」 忘れもしない、私の人生唯一の、プロポーズの言葉である。 お相手の年齢は、4。 場所は、勤めていた幼稚園。年少クラスの水飲み場付近での出来事であった。 しかし彼は数日前に、担任教諭のあんな先生にも…

ロマンスの果て

忘れられないひとこと。 そう、忘れられないほど心に残るのは、いつだって、何気ないひとことだった。 先日ツイッターを始めたのだが、 信じられないことが起こった。 事の始まりは、我が家の茶の間のテレビである。 茶の間がざわついていたので立ち寄ってみ…

愛の都カリオストロ

失恋して逃げ込んだのは、カリオストロの城だった。 29のとき、失恋した。 した、っていうか、させられた。 正確に言うなら、失恋ですらなかった。 あの顛末は、今思い出しても、わけがわからない。 窮地に追い込まれたときの行動で、その人がどんな人間かわ…

たとえアウトレイジでも

世はクリスマスもクリスマス。この国は2ヶ月間クリスマスを開催しないと気が済まないらしい。 そのためか近頃、男性客のギフト購入が増えている。 正直、男性客のギフトラッピングが一番緊張する。だいたいが女性向けのギフトなのだが、ラッピングの良し悪…

暴れん坊将軍KISS

前回白髪についてのお話をしたわけだが、毛つながりでもう一本。 私のくせ毛が、言うことを聞かなくなってきてる。 くせ毛、この道ひとすじ30年。 私のくせ毛が今や、髪の毛であることを忘れようとしている。 くせ毛っつーか、くせ者っぽくなってきてる。 凶…

ホワイトロード

秋もいよいよ深まった、今日この頃。 緑から黄色へ、赤へ。 木々が色とりどりに姿を変えて人々の目を楽しませる中、 私の頭という山にも同じ現象が巻き起こっている。 髪の早期退職が後を絶たない。 抜けているわけではない。 髪が、明らかに色を失いつつあ…

ヴィッツ・レクイエム

もっと、一緒にいられると思っていたのに。 今日ね、車検だったんですよ。2年おきの。 久々にね、本当に久々に行ってきたんですよ、車屋さんに。 そしたらね、 私の車、死にかけだった。 壊れかけのRadioならぬ、壊れかけのヴィッツ。 今日っていうか気持ち…

嘘みたいなアイミスユー

第一印象は最悪だった。 でも今は、アイツが気になってしかたがない―― 小売業のカレンダーは、いつだって未来を走る。 ハロウィーンとかいう 定着したんだかしてないんだかわからないイベントが終わったとたん、 余韻にひたる間もなく今度は「みんな、クリス…

思いがけない告白

店長と遅番を終えた帰り道、 「日向さんって休みの日、いったい何してるんですか?」 と実に不思議そうに尋ねられた。 同僚から見て、私のプライベートは謎に包まれているらしい。 「基本引きこもってるからなぁ」と常々口にしてきた私が、 同じフレーズを発…

オルゴールのいたずら

うちの店ではBGMに有線放送を流しているのだが、 この有線が、聴いているとけっこうおもしろい。 特に私は「季節のオルゴール」というチャンネルのファンである。 季節のオルゴールというだけあって、 四季折々に、その月に似合った曲がオルゴールアレンジバ…

できたの魔法

前回同様チコちゃんがらみの話なのだが、 アフォーダンスという概念をご存じだろうか。 アフォーダンスとはもともと ギブソンという心理学者が生み出した造語だそうで、 「環境世界が知覚者に対して与えるもの」とかいう具合に訳される。 正直なところ、これ…

彼とYシャツと私

NHKの「チコちゃんに叱られる!」が大好きで、 もうこの番組を心の支えに生きていると言っても過言ではないのだが、 先日、少々なつかしさを覚えるテーマを扱っていた。 「シャツのボタンが男女で逆に付いているのはなぜ?」 朝食をとりながら再放送を背中で…

あなたと私のくつした

靴下が好きだ。 靴下を見るのも、履くのも、描くのも好きだ。 集めようとせずとも集まってしまう、 その程度には靴下が好きだ。 うちの店には年に数度、 3足組で500円の靴下が登場する。 これに私は、実に弱い。 というのも、この靴下がなかなかどうして、…

それはまるでつむじ風のような

先日信号待ちをしていて、驚くべき現象を目にした。 そこは見通しの良い交差点で、 左前方にはコンビニがあった。 私は車の運転席から、何気なくそちらに目をやった。 ちょうどコンビニから メガネをかけた男性が出てくるところだった。 男性は右手に弁当の…

2週の間あなたを待っているわ

日向もえこは一見 平凡なアラサー独女だった。 けっして美少女ではなく成績もよくはなかった。 カネ・キャリア・恋人はなく 小さな雑貨店のしがないへっぽこ店員 いったい誰が… そう…この小さな独女の胸に熱く激しく燃える炎のことを…… いったい誰が知っただ…

危険なバディー

ひとには無限の可能性があると、巷ではよくいう。 しかし無限の可能性がある中で、 ひとの命は有限である。 命が無限ならば、 どんな可能性にも、いくらだって賭けたらよい。 どんな能力も、どこまでだって伸ばせるかもしれない。 けれども。 有限の時を生き…

たぶんお呼びでなかった

うちの店に、男性の常連客がいる。 いるっていうか、もはや、いた。推定年齢は40代後半~50代後半。店長によると、お気に入りの女の子と話すことを楽しみに来店しているらしく、気に入った子がレジにいないと、いつまでも会計に来ない。 ついには、お目当て…

おじいちゃんマップ

オーケー、これは現実だ。間違いない。繋がっている。 ――村上春樹 1988.ダンス・ダンス・ダンスより 通勤中、よく見かけるおじいちゃんがいた。 早番で出勤した際、職員駐車場へ続く交差点を、右にハンドルを切ったタイミング。必ずこのタイミングで、彼は…

ロングショットもわるくない

今朝、窓の外をちょうちょがひらひらと行き過ぎるのを見た。 淡い黄色の、モンシロチョウのような蝶だった。ちらちらちら、と飛ぶ姿はなんとも可憐で、メルヘンそのものだった。 しかし次の瞬間に思ったのだ。アップで見ると、なかなかグロテスクなんだよな…

ササミ・クエスト

可能なかたは、ポルノグラフィティの「メリッサ」をBGMにお読みください。 作り置き。 それは、HP低めの私を救う魔法。 毎日のように弁当を用意するのだが、 毎朝、一から新しいメニューを用意する明るい活力は、残念ながら私にはない。 もう作り置きを愛…

わたしのサンクチュアリ

ノーベル文学賞受賞者も発表され、 風が完全なる秋の訪れを告げる今日。 読書の秋にちなんだ話をひとつ。 甥っ子に絵本を贈るために、図書館へ赴いた。 図書館?本屋ではなく? イエス。図書館です。 図書館は、訪れる人に優しい。 ふらっと入って、無料で本…

心頭滅却すれば火もまた涼し

生きとし生けるものの一員として、少々心配になった出来事がある。 私の着物・浴衣は押し入れの天袋が定位置なのだが、この夏うっかり虫干しをしそびれ、今日あわてて風を通して、防虫剤を添えて、さあ天袋エリアに戻すぞ、というとき。 天袋と言っても、我…

小悪魔なキーワード

運命のいたずらとは、たぶん、そこかしこにある。 ブログを開設してひと月ほど経ったが、近頃このブログが、ちょっとした悲劇を巻き起こしていることに胸を痛めている。 ときに、検索キーワードは、小悪魔すぎやしないだろうか。 私は、機械とか、ネットだと…

日向もえこは2着しかパジャマを持たない

寒い。 この間まで、ゆでダコみたいな顔で職場に参上したり、お弁当の春雨が腐ったりするほど暑かったっつーのに、この急降下。秋って、こんなにせっかちなやつだったっけ?もうちょっと、慎重派じゃなかった? 今朝なんて寒さに震えながら目を覚まし、鏡を…

続・ぼくらのカントリーロード

たいへんなことが判明しました。 この間の、チャップリンとガラスの仮面の話の、いわば続報になるんですけど、 チャップリンをね、借りに行ったんです。 この前、天沢聖司が返却してくれていた、チャップリンのカルメンをお目当てに。 そしたらね、チャップ…

ちゃっきーの伝説

ちゃっきーのことでさらにいろいろ思い出したので、雑多につづろうと思う。 ジャージを校庭に置き忘れたことを思い出したらしい。 こんなこともあった。 院生の先輩方も一緒だったというのに、ハート強めのちゃっきー。むしろその動じなさに院生の方々が動じ…

彼とパジャマと私

パジャマの話で思い出したことがある。 大学4年生の頃、卒業論文のテーマに悩み、図書館で本を読んでいたときのことだ。 「よぉ、お疲れ」 顔を上げると、ゼミの同期が本を小脇に立っていた。 「おー!そっちも卒論準備?」「んー、俺はちょっと息抜きに」 …

ぼくらのカントリーロード

自分だけだと思っていたのに。 そういうこと、ありますよね。 夏にふと思い立って、録画していたチャップリンの映画を見続けた。 ライムライト。 独裁者。 モダン・タイムス。 チャップリンの黄金狂。 チャップリンの殺人狂。 そして、街の灯。 幼い頃に観た…

リラコが教えてくれたこと

大切なことは、ぜんぶリラコが教えてくれた。 とみに肌寒くなった今日この頃、私は毎夜たいへん粗末な格好で眠っている。ワンピースと、Tシャツ+ズボンの2パターンを交互に回していたのだが、長年の勤労がたたり、ズボンがついに瀕死になってしまった。10…

需要と供給

うちの店では、靴下を売っている。 靴下の発注を担当したことがあったのだが、そのチョイスが物議をかもし、ある夏、店長に呼ばれた。 「日向さん、これ、」 店長は問題の靴下を指し示した。 「どういうことですか」 「どうしてこれを入れようと思ったんです…